【Coffee Break】「お前はどうしたい?」を形骸化させない。自律を引き出すマネジメントの「問いの階段」

本日は、皆様の現場でのマネジメントにおいて、ちょっとした気づきになればと思い筆を執りました。
テーマは、リクルート社の文化であり、日本のビジネスシーンでもよく語られる問い「お前はどうしたい?」についてです。

読者の皆様の中には、この言葉の背景を詳しくご存じない方もいらっしゃるかもしれません。私自身もかつてリクルートという組織に身を置いていましたが、入社当初、この文化に非常に戸惑いました。

上司に相談や報告をするたびに「で、お前はどうしたいの?」と問い返される。正解を求めて指示を仰ごうとしていた当時の私は、この言葉を投げかけられるたびにフリーズし、言葉に詰まってしまったものです。

しかし、後になって気づきました。この問いこそが、同社が数多くの起業家や優秀なビジネスパーソンを輩出している源泉だったのです。


「どうしたい?」に込められた真意

これは単なる質問ではなく、強烈なオーナーシップの要求でした。

  • 「あなた自身の意志(Will)はどこにあるのか?」
  • 「会社や上司の指示を待つのではなく、主体者としてどう決断するのか?」

この文化が広く知られるようになり、多くのマネージャーが現場でこの言葉を口にしてきました。しかし、実際に部下に投げかけてみて、的外れな回答が返ってきたりして、頭を抱えた経験はないでしょうか。
結論から言えば、この言葉を単なるテクニックとして模倣しても、組織は自律しません。

「どうしたい?」が単なる“丸投げ”になる瞬間

この問いが機能しない最大の理由は、「情報の非対称性」です。

予算の限界、顧客の真の課題、プロジェクトの複雑な背景。こうした判断に必要な材料を渡さないまま「どうしたい?」と問うのは、部下にとって単なる「責任の丸投げ」です。上司の頭の中にある正解を探り当てる「忖度ゲーム」になってしまっては、自律どころか組織は萎縮します。

仮に部下が自分なりの「こうしたい(Will)」を口にしたとします。しかしビジネスの現場において、個人のWillが、会社からの要求や厳しい制約条件(Must)と綺麗に一致することは稀です。

ここで「とはいえ、会社のルールだから」とMustで押し切ってしまえば、部下は二度と本音を語らなくなります。逆にWillだけを優先すれば、業績は崩壊します。

重要なのは、衝突を恐れず「テーブルの上に双方の意見を出し切り、徹底的にすり合わせる」ことです。そのヒリヒリするような対話から逃げない覚悟と、上司自身の明確な意志があって初めて、この短い問いは相手の心を動かします。


明日から現場で使える「問いの階段」3つのSTEP

これまで指示待ちだった部下に、明日突然「どうしたい?」と問いかけても機能しません。相手の成熟度に合わせて、自律思考を引き出す「問いの階段」を設計しましょう。

▼ 自律を引き出す3つのSTEP
  • STEP 1:選択肢の提示と理由の言語化(初期段階)
    「今回の件、A案とB案があると思うけど、〇〇さんはどちらが良いと思う? その理由も教えてもらえる?」
    まずは「選ぶ」という小さな決断を通じて、自分なりの根拠を言語化させます。
  • STEP 2:制約条件の確認と逆算(中級段階)
    「今回のプロジェクトで、絶対に外してはいけない条件は何だと思う? それを踏まえた上で、どう進めようか?」
    ただの「やりたいこと」ではなく、ビジネスの枠組みの中での最適なアプローチを考えさせます。
  • STEP 3:視座の引き上げ(上級段階)
    「もし君が私の立場(あるいは決裁者)だったら、この状況に対してどういう決断を下す?」
    部分最適ではなく、全体最適の視点で「Will」を持たせます。


おわりに

部下に「どうしたい?」と問いかける前に、まずはご自身に問いかけてみてください。

「私自身は、このチームと、この仕事を、どうしたいのか?」と。

いきなり完璧な答えを求める必要はありません。まずは明日、部下からの報告を受けた際、STEP 1の「判断のバトンを少しだけ渡す」ところから始めてみてはいかがでしょうか。